襦袢に付ける「半衿」って何?

襦袢に付ける「半衿」って何?何のために付けるの?半衿と伊達衿(重ね衿)って何が違うの?着物の格式と季節ごとの選び方・付け方や洗い方など、着物には必ず必要になる「半衿」について解説します。又その半衿マナー違反かも!? TPOや季節できちんと使い分ましょう

きものを着る人の魅力を引きだす“和装小物”。
特に目につきやすい衿元を飾る「半衿」は、TPOや季節の違いに合わせたコーディネートが大切です。「半衿」の色やデザインをバランスよくコーディネートし、お手持ちのきものに合わせて和装を楽しむポイントをご紹介します

日本人の着物を着る機会の減少と、礼装としての着物の浸透により、現在では着物を着用する際には、白い半衿を用いることがほとんどです。

伊達衿(重ね衿)との違い

長襦袢の衿を汚れからの保護する役割の「半衿」と着物を重ねて着ているように見せるための「伊達衿」
名前は似ていますが、まったく用途の違うものです。
伊達衿は、長さ120〜130cm 幅10〜12cm前後、裏地付きの二重仕立ての布でできていています。半衿よりも厚手でしっかりした作りになっています。
半衿と違い、必ずしも必要なものではありません。
もとは礼装時に、着物を2枚重ねて着る習慣の名残りから生まれたのが「伊達衿」です。

  • 1.この半衿はどのきものに合わせるのが正解?

    きものは着用する時期や場所によって、仕立てや素材が変わります。「半衿」も着用するきものに合わせて変えることが“きもの美人”に見える着こなし術の一つです。

    ■半衿の生地の種類

    「半衿」の素材に多く使用されるのは、「正絹」です。しかし、正絹は軟らかく高級感のある素材ですが、使用年数が長くなると黄ばみが発生し変色してしまうことも。
    近年では「洗える正絹」の素材や「化繊」なども、手入れがしやすく人気があります。「交織」や「麻」などを使用した半衿も、きものに合わせて楽しまれています。

    (1)塩瀬(しおぜ)

    「塩瀬(白塩瀬羽二重)」は、横畝に特徴がある織り方で、気温の下がる秋の10月頃から春先の5月頃まで着用するきもので使用できます。振袖や留袖、訪問着などのさまざまなきものに合わせて、きもののコーディネートを楽しめるのがポイントです。
    また、正装だけでなく、小紋や紬、御召、木綿などの単位仕立てのきものでも幅広く合わせられます。

    (2)絽(ろ)

    「絽」を素材とする半衿は、6月から9月下旬ごろまで着用する“夏の半衿”と覚えてしまいましょう。隙間のある織り方が特徴で、涼感のある雰囲気が夏の素材として爽やかなイメージの半衿になります。
    夏に着用することの多い「裏地のない単衣仕立て」のきものなどに、合わせやすい素材です。

    (3)麻絽(あさろ)

    夏にきものを着用する場合に必要なのは、着ている人も見る人も涼感を味わえることです。7月や8月の盛夏期に着る夏紬や麻などの織物のきものに「麻絽」の半衿を合わせて、涼しげな衿元できものを楽しめます。

     

    (4)楊柳(ようりゅう)

    「楊柳」は、“ようりゅう”や“きんち”と呼ばれる、織り方が縦向きになった「縦しぼ」が特徴です。「楊柳」素材の半衿は、5月に着用する春単衣や9月頃着用する秋単衣に合わせた、きものの衿元に似合うと言われています。

    (5)絽縮緬(ろちりめん)

    「絽縮緬」は
    “さらり”とした着用感が特徴の素材です。絽や麻絽などと同じ時期に使用しますが、特に6月や9月などに使われることの多い素材として知られています。きものは単衣のきものに合わせることが多く、小紋や織物など、どちらにも合わせられるおしゃれな半衿素材です。

    (6)縮緬(ちりめん)

    絽縮緬が夏向き素材であるのに対して、「縮緬」は冬の寒い季節に合う半衿の素材といえます。素材にもボリューム感があり、紬などのきものにもコーディネートがしやすい半衿になります。

     

    ■きものによって違う「半衿」の組み合わせは?

    TPOも考慮に入れた「半衿」と「きもの」の一般的な組合せ例をご紹介します。おしゃれかな?と思っても、フォーマルな場合には色などの選択も大切です。
    TPOに合わせたコーディネートで美しいきもの姿できものを楽しみ、「きもの美人」を披露してしまいましょう!

    ・振袖:塩瀬(白塩瀬羽二重)など / (色)白、もしくは白地に白などの刺繍も可能
    ・振袖(婚礼用):塩瀬(白塩瀬羽二重) / (色)白、もしくは白地に白・金・銀の刺繍
    ・留袖・色留袖:塩瀬(白塩瀬羽二重)など / (色)白、もしくは白地に白、淡い色の刺繍も可能
     ※冠婚葬祭は白のみ、茶会も白地が基本です。
    ・色無地・付け下げ:塩瀬、縮緬、絽縮緬、楊柳 / (色)白地に刺繍、色物(カラー)に刺繍
    ・小紋・紬・織り:塩瀬、絽、麻絽 / (色)白地や色物(カラー)や色物(カラー)に刺繍、柄ものなど

    2.色や刺繍の入った半衿もきちんと使い分けましょう

     

    近年では「半衿」の素材だけでなく、色や刺繍などのデザインされた半衿を楽しむことも、きものの魅力の一つです。とはいえ、TPOが必要になるときは季節だけでなく色を意識することも“きもの美人”になるポイント。

    ■フォーマルな場に色付き半衿はNG!?

    「白」と「色物(カラー)」に分けられる半衿。「白」の半衿は、振袖・留袖・訪問着のフォーマルなきものに一般的に使用される基本のスタイルです。

    少し薄めの淡い色の「半衿」であれば、セミフォーマルなきものと合わせることもあると言われています。きものと半衿のコーディネートは大切なことですが、TPOが関係してくる正式な場所には「白」の半衿がお勧めです。
    近年人気のある「色物(カラー)」の半衿は、コーディネートに幅ができ、おしゃれな着こなしを楽しめます。アクセントとしてきものを明るく見せ雰囲気を変えるのにも役立ちますが、カジュアルなきものに合わせることが良いでしょう。

    ■刺繍半衿は刺繍糸の色に注意

    「刺繍半衿」もTPOを意識した使い分けが大切です。白地の半衿に「白」「金」「銀」の刺繍は、婚礼で着用されることが多くあります。また、フォーマルで着用する際には、黒留袖や留袖、訪問着などに刺繍半衿を使用する時は、刺繍糸の色も注意が必要です。

    淡い色目の半衿に刺繍のあるものは、付け下げや色無地のアクセントとしても魅力があります。
    「色半衿」に刺繍のあるものと紬や小紋などのきものを合わせて使用するのは、カジュアルに着こなすポイントです。

    3.幅広く半衿を使いたいならどんな半襟を選べば良い?

    フォーマルな場所から普段使いのカジュアルなきものまで、幅広く使用できる半衿を1つは用意しておくことがお勧めです。
    スタンダードな選び方は「塩瀬(白塩瀬羽二重)」の半衿でしょう。TPOに合わせた使い方ができ、フォーマルにもカジュアルにも対応できます。

    半衿の付け方

    はじめて半衿を付ける方に、半衿の付け方を紹介します。
    まずは、王道の半衿を長襦袢に縫い付ける方法。
    両面テープで付ける方法、ファスナー式の半衿についても紹介します。

    王道は縫い付ける方法

    準備するもの

    ・長襦袢
    ・半衿
    ・衿芯
    ・縫い針
    ・まち針
    ・縫い糸
    ・糸切りばさみ
    ・アイロン

    1.半衿にシワが付いている場合は、アイロンをかけて伸ばします。
    正絹の半襟の場合は、裏側から、
    ポリエステルの半襟の場合はあて布をしてシワを伸ばします。

    2.半衿を1cmほど内側に折り、長襦袢の表側に背中心にしっかり合わせまち針で留めます。

    3.中心から両端に向かってまち針で留めていきます。全部で10本くらい留めます。

    4.半襟の端からくけ縫いをします。

    5.表側が縫い終わったら、長襦袢を裏返し、長襦袢の地衿を覆うように半衿を折り、このとき余分な布は内側に折り込んで
    まち針で留めます。

    6.右端からくけ縫いをしていきます。
    半衿は、長襦袢の地衿より少し内側に折り衿芯か入る幅を確保して縫います。

    7.衿芯を差し込んで完成です